SESとして働く中で、「このままでいいのだろうか」「いつまで常駐を続けるのだろうか」と感じたことがある人は少なくありません。
私自身も、技術派遣・客先常駐という形でSESを経験し、その後、情シス・社内SE的な立場を経てキャリアを進めてきました。
本記事では、SESという働き方を否定するのではなく、実体験と採用側視点を踏まえたうえで、「SESから次のキャリアへ進む現実的な方法」を整理します。
SESから抜けるか迷っている方は、36歳からのIT転職ロードマップで、転職全体の流れも整理しています。
SESという働き方を正しく理解する
SESとは何か(派遣との違い)
SES(システムエンジニアリングサービス)は、雇用主はSES企業、就業先は顧客企業という形態です。
一見すると派遣と似ていますが、指揮命令系統や責任の所在が曖昧になりやすい点が大きな違いです。
雇用形態と責任の所在
SESは、雇用主はSES企業/就業場所は顧客企業です。
現場で評価されても、その内容が自社に正確に共有されないことがあり、成果が昇給やキャリアに反映されにくい傾向があります。
責任の所在が曖昧になり、トラブル時に板挟みになるケースも見られます。
派遣も雇用主は派遣会社ですが、指揮命令権は派遣先に明確にあります。
業務内容や役割が契約で定義され、派遣先からの評価が契約更新や条件見直しに反映されやすい点が特徴です。
評価されるポイントの違い
SESでは、評価の多くが「現場で問題なく稼働しているか」「トラブルを起こしていないか」といった安定稼働に置かれがちです。
そのため、業務改善や主体的な提案をしても、評価に直結しないケースがあります。
一方、派遣では業務内容や役割が契約で定義されており、成果や貢献度が派遣先から直接フィードバックされやすく、評価の基準が比較的明確です。
SESの多重下請け構造
SESでは、元請け・二次請け・三次請けといった多重下請け構造が発生しやすく、業務内容や単価が決められた後に現場へ配置される立場になりがちです。
この構造が、評価や年収に関する不透明さを生む原因になります。
なぜスキルが正当に評価されにくいのか
現場での成果や貢献は、営業や会社を経由して伝わるため、評価が間接的になりやすい傾向があります。
その結果、技術力や改善提案といった要素が正確に評価へ反映されにくくなります。
単価と年収の関係
エンジニア単価は上流で決められるため、単価が上がっても本人の年収に直結しないケースがあります。
単価と給与の関係が見えにくい点も、SES特有の課題です。
SESが「抜けにくい」仕組み
SESでは、働き方そのものがキャリアの固定化を招きやすい構造になっています。
現場依存のキャリア
業務経験が現場ごとに完結しやすく、スキルや実績が横断的に蓄積されにくい点が特徴です。
そのため、次のキャリアを説明しづらくなります。
会社都合アサインの現実
稼働継続が優先されるため、本人の希望より会社都合のアサインが重視されがちです。
結果として、キャリアを考えるタイミングを逃しやすくなります。
SESで消耗する人が増える理由
SESという働き方そのものが悪いわけではありません。
しかし、一定の条件が重なると、精神的・キャリア的に消耗しやすい構造を持っているのも事実です。
ここでは、SESで「つらさ」を感じやすくなる主な要因を整理します。
案件ガチャが起きる仕組み
案件の当たり外れは何で決まるか
SESの案件は、本人の希望やスキルだけで決まるとは限りません。
実際には、案件の空き状況やタイミング、営業判断など、本人がコントロールできない要素が大きく影響します。
その結果、経験を積みたい分野とは異なる現場に配属されるケースも珍しくありません。
現場ガチャがキャリアに与える影響
良い現場に当たればスキルが伸びる一方、そうでない場合は数年単位で経験が停滞することもあります。
この差は、後の転職時に大きく影響します。
SESで消耗しやすくなる大きな要因の一つが、案件の当たり外れが本人の努力では左右しにくい点です。
実際にどのような差が生まれるのかは、SESの案件ガチャのリアルで具体例を交えて解説しています。

評価制度の問題点
現場評価と社内評価のズレ
現場では評価されていても、その内容が自社に十分に伝わらないことがあります。
評価の主体が分かれているため、成果が間接的になりやすいのがSESの特徴です。
評価が納得できないと感じる理由は「頑張っているのに評価されないと感じる理由」で詳しく解説しています。
頑張りが給与に反映されない理由
評価基準が曖昧だったり、社内であまり評価されない業務である場合、昇給や条件改善の根拠が弱くなります。
その結果、「頑張っても変わらない」と感じやすくなり、モチベーション低下につながります。
努力しても年収が伸びにくい背景は「SESで年収が上がらない理由」で、SESの構造の問題を交えて解説しています。
人間関係・孤独感の問題
常駐先で孤立しやすい理由
SESでは、エンジニアは顧客企業の一員として働く立場ではなく、あくまで外部リソースとして業務に入る役割です。
そのため、組織の意思決定や雑談・情報共有の輪に自然に入れないことが多く、業務上の相談や確認が最小限になりがちです。
結果として、業務上は問題なく動いていても、人とのつながりが希薄になりやすいという状況が生まれます。
相談できる人がいない構造
現場では顧客企業の事情に配慮する必要があり、自社には現場の細かい状況を伝えづらいこともあります。
現場の悩みは自社に伝えにくく、自社の事情は現場に出しにくい。
この板挟み構造が、精神的な負担を大きくします。
SESで「相談しづらさ」が生まれるのは、一人常駐の場合に限りません。
複数人で客先に常駐している場合でも、役割や契約範囲が限定されているため、場合によっては業務や判断について踏み込んだ相談がしにくい状況が生まれやすくなります。
派遣は契約上、社員に近い立場で業務を任せることができるため、業務の背景や内部事情も比較的共有しやすい傾向があります。
一方、SESは指揮命令権がなく関与範囲が限られるため、基本的に窓口担当者とのやり取りが中心となり、結果として細かな意図や背景が伝わりにくく、コミュニケーションに距離が生まれやすくなります。
常駐先での人間関係の悩みは「SES常駐で人間関係がつらい理由」で対処法を解説していますので、悩んでいる方は参考になさってください。
それでもSESで「伸びる人」がいる理由
SESは消耗しやすい構造を持つ一方で、同じ環境でも着実にキャリアを前に進めている人がいるのも事実です。
その違いは、能力そのものよりも「考え方」と「行動の取り方」にあります。
SESでもスキルが身につく人の共通点
現場を選べる/選ぼうとする姿勢
伸びる人は、アサインを完全に受け身で捉えません。
業務内容・体制・期待役割を事前に確認し、少しでも経験が積める現場を選ぼうとします。
結果として、同じSESでも経験の質に差が生まれます。
与えられた役割より一段上の業務を意識している
伸びる人は、指示された作業だけで完結せず、「次に必要になりそうな作業は何か」「自分が関われる余地はないか」を考え、一段上の業務を任せてもらえるように行動します。
この積み重ねが、調整力や業務理解といった評価されやすいスキルにつながります。
業務外でキャリアを整理している
日々の業務だけに追われず、「この現場で何が身についたか」「次に活かせる経験は何か」を定期的に言語化しています。
これが転職時の強みになります。
SESで生き残る人の思考パターン
短期・中期・長期を切り分けて考えている
伸びる人は、現場を「永住先」とは考えません。
短期(今の業務)・中期(次の転職)・長期(最終的なキャリア)を分けて考えることで、目先の不満に振り回されにくくなります。
現場を「消耗」ではなく「材料」として捉える
すべてが理想的な現場でなくても、「この環境から何を持ち帰れるか」という視点で仕事を捉えています。
この姿勢が、次の選択肢を広げます。
「伸びない人」との決定的な違い
SESで伸びる人は、
- 環境のせいにしすぎない
- かといって無理に耐え続けない
- 常に次の選択肢を意識している
という共通点があります。
SESを続けるか、次へ進むかは人それぞれですが、少なくとも「何も考えずに時間だけが過ぎる状態」からは早めに抜け出すことが、キャリアを守る上で重要です。
私自身、SES時代に一人で客先に常駐する案件を経験しました。
当初は開発業務が中心でしたが、客先社員から情報整理や資料作成を依頼される場面が増え、そのたびに「どうすれば相手にとって分かりやすいか」を考えながら対応していました。
その姿勢が評価され、次第に担当社員のサポート業務を任されるようになり、やがて開発タスクのWBS作成や進捗の取りまとめまで依頼されるようになりました。
この経験を通じて、単なる作業者ではなく、全体を見て管理する視点が身につき、後のキャリア選択に大きく役立ったと感じています。
SESから抜ける主なキャリアルート
SESから次のキャリアを考える際、重要なのは「理想」よりも現実的に選べる選択肢を把握することです。
ここでは、SES経験者が実際に選びやすい代表的なキャリアルートを整理します。
- 社内SE(最も現実的)
- ITサポート・情シス(経験を活かしやすい)
- 自社開発(難易度高め)
① 社内SE(最も現実的な選択肢)
SES経験が評価される理由
社内SEでは、開発経験以上に「業務理解」「調整力」「利害関係者とのコミュニケーション」といったスキルが重視されます。
これらは、SESで現場対応をしてきた人ほど身につきやすい能力です。
社内SEで求められる視点
社内SEは「作る」よりも「業務を止めない」「全体を回す」視点が求められます。
SESで培った運用経験や現場対応力は、ここで強みになります。
②ITサポート・情シス(経験を活かしやすい)
開発経験がなくても評価されるケース
ITサポートや情シスでは、「問い合わせ対応」「障害切り分け」「ベンダー調整」といった業務が中心です。
SESでの現場対応経験が、そのまま評価されるケースも多くあります。
中小企業・地方企業との相性
特に中小企業や地方企業では、「一人で幅広く対応できる人材」が求められます。
SESで複数現場を経験してきた人ほど、適応しやすい傾向があります。
③ 自社開発(難易度は高め)
なぜ難易度が高いのか
自社開発企業では、「設計・実装経験」「レビュー経験」など、具体的な開発実績を重視する傾向があります。
SESで開発に深く関われていない場合、ハードルは高くなります。
挑戦するなら必要な条件
自社開発を目指す場合は、
- SES在籍中に開発案件へ関わる
- 個人開発や業務改善ツールを作る
- 実績をポートフォリオとして整理する
といった準備が必要です。
勢いだけでの転職は、失敗につながりやすいため注意が必要です。
SESからの転職では、「今できること」と「次に広がる可能性」を切り分けて考えることが重要です。
一度の転職で理想をすべて叶えようとせず、次につながる選択肢を選ぶことが、結果的にキャリアを安定させます。
SES→社内SEに転身するための現実的ステップ
SESから社内SEへの転身は、「特別なスキルが必要」というより、経験の整理と見せ方で差がつく転職です。
ここでは、実際に通過しやすい流れをステップごとに整理します。
まずは、現職含めて会社の見極めをしたい方は「SES会社の探し方」を見ていただけるとよいかと思います。
現場で最低限身につけたいスキル
業務理解力を意識する
社内SEでは、技術そのもの以上に「業務を理解し、止めないこと」が求められます。
SESの現場でも、「何のためのシステムか」「障害が起きると業務にどう影響するか」を意識して業務に関わることで、社内SE視点の経験に変わります。
調整・報告・改善の経験を積む
社内SEでは、ユーザー・ベンダー・上長や他部署との調整が日常業務になります。
SESの立場でも、進捗共有や改善提案を丁寧に行うことで、転職時に社内SEの採用担当や現場責任者から、
「技術だけでなく調整も任せられる人材」と評価されやすくなります。
職務経歴書の考え方
「現場作業」ではなく「役割」で書く
社内SE採用では、「何を作ったか」よりも「どんな立場で、何を支えてきたか」が重視されます。
そのため、作業内容の羅列や技術キーワードの詰め込みではなく、役割・工夫・結果を軸に整理することが重要です。
SES経験を弱点にしない書き方
SESであること自体は不利ではありません。
むしろ、「複数現場を経験している」「環境変化への適応力がある」といった点は、社内SEにとって強みになります。
それを言語化できているかどうかが評価を分けます。
SES経験は書き方次第で評価が大きく変わります。
現場作業の羅列ではなく役割ベースで整理する方法は、「SESから転職する人の職務経歴書の書き方」で具体例付きで解説しています。

面接で見られているポイント
SES批判をしない理由
面接では、SESへの不満を強く語ると「環境のせいにする人」という印象を持たれやすくなります。
大切なのは、「なぜ社内SEを選んだのか」を前向きな理由で説明できることです。
なぜ社内SEなのかを説明できるか
社内SEを目指す理由として、
- 業務全体に関わりたい
- 長期的にシステムを改善したい
- ユーザーに近い立場で仕事をしたい
といった役割志向の動機は好意的に受け取られます。
「SESから逃げたい」という理由だけでは弱いため注意が必要です。
SESから社内SEの転職では、一度で理想をすべて満たそうとしないことが重要です。
まずは運用寄りの社内SE→次に改善・企画寄りというように、システム知識から業務知識が必要となる領域に向かって段階的に役割を広げる方が、結果的にキャリアは安定します。
実際の成功パターンや評価ポイントは、SES→社内SEへ転身する方法|現実的な成功ルートと判断軸で詳しく解説しています。

SES脱出を阻む“よくある誤解”
SESから次のキャリアを考える際、多くの人が事実とは少しズレた思い込みによって行動を止めてしまいます。
ここでは、特によく見かける誤解を整理します。
開発経験がないと社内SEにはなれない?
社内SEに必ずしも高度な開発経験は求められません。
実際には、
- 業務理解
- 運用・保守経験
- 調整や問い合わせ対応
といったスキルが重視されるケースも多くあります。
SESでの現場対応経験は、社内SEでは十分に評価対象になります。
年収が必ず下がる?
短期的に年収が下がるケースはありますが、中長期で見ると安定しやすいのが社内SEの特徴です。
SESでは現場や契約に左右されやすい一方、社内SEでは評価制度や昇給ルートが比較的明確な企業も多く、結果として年収が伸びていくケースも少なくありません。
30代後半ではもう遅い?
SESからの転職に年齢制限があるわけではありません。
特に社内SEでは、「落ち着いて対応できる」「調整や説明ができる」といった年齢を重ねた強みが評価されます。
実際、30代後半での転身例も珍しくありません。
今の現場が忙しくて準備できない?
忙しいからこそ、準備を後回しにすると状況は変わりません。
必要なのは大きな行動ではなく、
- 職務経歴書の整理
- 経験の棚卸し
- 市場価値の把握
といった小さな準備です。
これだけでも、次の選択肢は見え始めます。
「SES=すぐ抜けるべき」と考えがちですが、実際には環境次第で状況が大きく変わるケースもあります。
今の会社が本当に見切るべきか迷う場合は、良いSES/悪いSESの見分け方で、入社前・在籍中に確認すべきポイントを整理してみてください。

SESから抜ける前に整理しておくべきこと
SESから次のキャリアへ進む前に、やみくもに動くのはおすすめできません。
重要なのは、今の自分の立ち位置を正確に把握し、判断軸を明確にすることです。
ここを曖昧にしたまま転職すると、同じ悩みを繰り返す可能性が高くなります。
今の立ち位置を把握する
スキル・経験の棚卸し
まずは、これまでのSES経験を感覚ではなく言語化します。
- どんな業務を担当してきたか
- どの範囲まで任されていたか
- トラブル対応や調整経験はあるか
重要なのは「できる・できない」ではなく、第三者に説明できる形で整理できているかです。
市場でどう評価されるかを知る
自分の経験が市場でどう見られるかは、社内にいても分かりません。
転職サイトや診断ツールを使い、「年齢×経験×職種」での相場感を把握しておくことが重要です。
転職の優先順位を決める
何を優先し、何を捨てるか
転職では、「年収」「安定性」「働き方」「成長性」すべてを同時に満たすことは難しいのが現実です。
だからこそ、今回は何を最優先にするのかを決める必要があります。
短期と中長期を切り分ける
今すぐの条件だけでなく、「この転職が3〜5年後につながるか」という視点を持つことで、判断がぶれにくくなります。
「動くか・残るか」の判断基準を持つ
今の現場で得られるものは何か
すぐに抜けるのが正解とは限りません。あと半年で得られる経験や今しか関われない業務があるなら、計画的に残る選択も合理的です。
- 障害対応の一次切り分けを任されている
- 業務部門との調整に関わっている
- 手順書や運用フローの改善を経験できている
このような業務は、社内SEや情シスで評価されやすい経験になります。
あと数か月でこうした実績を整理できるなら、計画的に残る判断も合理的です。
感情と判断を切り分ける
「つらい」「不安」という感情は自然なものですが、それだけで判断すると後悔しやすくなります。
事実・条件・将来性を整理したうえで判断することが重要です。
SESから次へ進む際は、闇雲に学習を増やすよりも、評価されやすいスキルの方向性を知っておくことが重要です。
実際にどのようなスキルが転職で評価されるのかは、「SES卒業に必要なスキルセット」で詳しく解説しています。

まとめ|SESから抜ける方法は「正しく理解し、段階的に動くこと」
SESという働き方は、必ずしも悪いものではありません。
一方で、評価やキャリアが構造的に見えにくく、消耗しやすい側面があるのも事実です。
重要なのは、感情だけで「抜けたい」と考えるのではなく、なぜ消耗するのか、どうすれば次につながるのかを理解したうえで動くことです。
SESでも伸びる人は、現場をただ耐えるのではなく、役割を意識して経験を積んでキャリアを言語化し、次の選択肢を常に見据えています。
また、SESからの転職は一度ですべてを変える必要はありません。
社内SEや情シスなど、現実的に評価されやすいルートを選び、段階的に役割を広げていくことで、キャリアは安定します。
まずは今の現場で得られる経験を整理し、自分の市場価値を客観的に把握することから始めてください。
その一歩が、SESから次のキャリアへ進むための確かな土台になります。
SESから抜けるかどうかは、キャリア全体の中で判断することが大切です。
年齢・経験・年収を踏まえた現実的な選択肢は、36歳からのIT転職ロードマップで詳しく整理しています。

